いろいろな話が出たのですが、プレス工場に入稿する際の音源ファイルのフォーマットについて話題にでました。結局はプレス工場にあるカッティングマシン及びソフトウェア次第というところに落ち着くのですが、まずビッドレート。これはどの工場でも、16bit でも24bit でも対応しているようです(たとえ24bitに対応していなくても、おそらく簡単にダウンサイズができるのだと思います)。
周波数サンプリングレートについては、44.1kHz がやり易いようですが、サンプリングレートを変換するソフトウェアによっては音が変わってしまうので要注意だそうです。何を使うと良いのかについてはここでは具体的に言えないですが、例えば96kHzで録音したものを ProTools で44.1kHzにすると少しだけボトムが痩せるといったようなことが起こるため、Dedeさんでは別のソフトウェアを使用しているようです。
次に、プレス工場で行われる一番初めの作業がカッティングマシーンに流す過程("Transfer to disc")で使われる音源について。
「納品する音源はマスタリング済みの音源」というのが一般的だと思います。ところが、上記の Transfer to disc は単純に音源を流すだけでは実はその通りの音は再生されないのです。このことはもしかしたらあまり知られていない事実かもしれませんが、必ずプレス工場でもマスタリングをしないといい音にはならない、つまりプレス工場でも音作りの過程が存在するというわけです。
というわけで、今回プレス工場には
1. トラックダウンのみ行ってマスタリングしていない音源(所謂"2Mix")
2. マスタリング済み音源
の2種類を送ってみて、どちらか使いやすい方で作業して下さいと伝えてみました。
どちらを採用するか確認してみたかったからです。
答えは 2. が採用されました。
その昔は、1. だったようです。ソフトウェアもない時代、マスタリングは工場でやるものというのが普通だったというのは極当たり前の話かもしれないです。
恐らく、工場のエンジニアさんは今でも、1. のやり方は可能だと思います。ただ、「2. のように仕上げてください」と注文したところで、音を近づけることはできても、そのものには絶対にならない。エンジニアさんはそのことを良く知っているので、2. のマスタリング済み音源を使うのだと思います。
で、先日紹介しました"The Mexican Part 1 & Part 2" (Q.A.S.B. + RYUHEI THE MAN)について、元の入稿した時のマスタリング済み音源ファイルと完成した7"ヴァイナル音源を比較してみましたところ、相当の差が見られました。一番の特長は7"インチの方がより音抜けが良くなっていることです(恥ずかしいことに、工場にファイルを納品してからは元のマスタリング済みファイルは全く聴いていませんでした)。
この曲については iTunes でも配信しているので、たまたまアップされていた YouTube動画 とも比較してみたのですが、やはり相当違います。
これがYouTube音源(恐らく7インチの購入者がアップしたもの)です。
"The Mexican Part 2"
ちなみに iTunes はこちら。
プレス工場のエンジニアさんは単に"メカに強い作業者"では勤まらないです。ちゃんと音楽を理解して、かつ音作りの知識がないと決してできない仕事だということに気付かされた瞬間でした。